アパレルやリサイクルショップ、雑貨店、飲食店などを開業する際には、POSレジの選定が欠かせません。現在、多くのPOSレジアプリが各社から提供されており、「どれを選べばいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。POSレジアプリを選ぶ際は、費用面の検討も重要ですが、まずはPOSレジの役割や主要機能を理解することが大切です。

一口に「POSレジアプリ」と言っても、サービスごとに実装されている基本機能や得意分野が異なります。

「無料プランで多機能なPOSレジはどれか」「店舗に必要な機能は何か」「各機能をどのように活用したいのか」など、実際の店舗業務をイメージしながら、各社のサービスを比較検討していきましょう。

本記事で取り上げる小売店向けのPOSレジアプリは、以下の5つです。

・スマレジ
・ユビレジ
・Airレジ
・STORESレジ
・Square POSレジ

豊富な機能を備え、価格面でも導入しやすいPOSレジアプリを提供する大手5社の中で、筆者がおすすめする無料のPOSレジアプリは「スマレジ」です。

その理由は、店舗の成長に伴い必要な機能や外部連携が変化しても、スマレジは多機能で外部連携に優れているため、同じPOSシステムを使い続けられるからです。

今回は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、大手5社の無料POSレジアプリの主要機能を比較し、それぞれの役割について解説します。


無料で利用可能な大手5社の「POSレジアプリ」

以下は、無料プランを提供する大手5社のPOSレジアプリの主な機能を比較した表です。

◆大手5社のPOSレジアプリの主要機能比較

大手5社のPOSレジアプリの主要機能比較(2025.6)

今回紹介しているPOSレジアプリの主要5社以外にも、専用端末で運用するシステムや業界特化型の専用POSシステムなど、さまざまな種類があります。ただし、上記の大手5社のPOSレジアプリはどれも無料プランを提供しており、iPadなどのタブレット端末があればすぐに導入可能です。

さらに、「クラウド型」であるため、インターネット環境があれば複数店舗の管理やリアルタイムでの売上・在庫の把握ができ、小規模店舗から多店舗展開の事業者まで、幅広いニーズに対応できるのが特徴です。

また、スマレジは公式ホームページから資料を無料でダウンロードできるので、まずは資料を確認して多機能なアプリを検討してみるのもおすすめです。

それでは、POSレジアプリの主要機能と役割について詳しく見ていきましょう。


① レジ機能

店頭で買い物をする際に欠かせない存在である「レジ」ですが、ここで一度、小売店におけるレジの役割や機能について整理してみましょう。

◆レジの役割・機能
 1. 会計処理:売上登録(バーコードスキャン)、お釣りの計算、レシート発行
 2. 決済処理:現金、クレジットカード、QRコード、電子マネーでの決済
 3. 注文受付機能:ハンディターミナルとしての機能

それでは一つずつ解説していきます。

1. 会計処理

「会計処理」のために売上を登録する場面を思い浮かべてみましょう。POSレジで売上を登録するには、以下の3つの方法があります。

方法① POSレジアプリに登録済みの商品を選択して登録する

方法② 商品のバーコードをバーコードスキャナーでスキャンして登録する

方法③ 商品のバーコードをタブレット端末のカメラでスキャンして登録する

大手5社のPOSレジアプリはすべて方法①と方法②に対応していますが、方法②を利用する場合は「バーコードスキャナー」を別途用意する必要があります。

バーコードスキャナーには高機能かつ高価な製品もありますが、USB接続可能な手頃な価格の製品でもPOSレジアプリで使用できます

付属品を購入する際に互換性が気になる場合でも、スマレジの公式ページでは互換性のあるバーコードスキャナーなどを購入できるので、安心して選ぶことができます。

方法③ではiPadのカメラを使ってバーコードをスキャンし、売上を登録することが可能です。しかし、スーパーのように大量の商品を効率よくスキャンする必要がある場合には、POSレジアプリに加えてバーコードスキャナーの購入を検討するのが良いでしょう。

また、「レシート発行」を利用する際には、POSレジアプリに接続可能なレシートプリンターが必要です。一般的なプリンターは5万円程度ですが、安価なものなら1万円以内で購入できる場合もあります。利用する際には、予備の出力用紙やインクなどの消耗品についても考慮することをおすすめします。

2. 決済処理

次に「決済処理」について考えてみましょう。現金払いのみの場合はPOSレジアプリだけで対応できますが、キャッシュレス決済にはキャッシュレス決済サービスとの連携が必要です。

各社が対応しているキャッシュレス決済サービスを以下の表にまとめましたので、ご確認ください。

各POSレジサービスにおいて対応可能なキャッシュレス決済サービス

POSレジアプリサービス対応可能なキャッシュレス決済サービス
スマレジPAYGATE(スマレジ)
JMSおまかせサービス
stera tarminal
StarPay
STORES決済
Square
楽天ペイ
ペイメント・マイスター
ユビレジ楽天ペイ
stera terminal
StarPay
STORES決済
Square
JMSおまかせサービス
オムニカード・ペイメント
AirレジAirペイ
Square
STORESレジSTORES決済
Square POSレジSquare

出典:各サービスの公式サイト「スマレジ」、「ユビレジ」、「Airレジ(AirREGI)」、「STORESレジ」、「Square POSレジ」(2025年6月現在)より作成

基本的には各社が提供するキャッシュレス決済サービスを使用しますが、「スマレジ」や「ユビレジ」では複数の提携サービスから選択可能です。

このように、POSレジアプリには会計処理や決済処理の機能があり、決済方法も現金だけでなく、カード、電子マネー、QRコードなど多岐にわたります。POSレジアプリで重要なのは使いやすさです。

例えば、新人アルバイトでも簡単に操作できるインターフェースが求められます。その点、スマレジアプリは特別なトレーニングが不要で、すぐに使い方が理解できるPOSシステムで、誰でも簡単に利用可能です。

特に、スマレジが提供するマルチ決済端末「PAYGATE(ペイゲート)」は、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などに1台で対応し、さらにレジ機能も備えたオールインワン端末です。

◆マルチ決済端末「PAYGATE」


出典:スマレジ公式サイト

シンプルなインターフェースで誰でも使いやすく、店舗のキャッシュレス対応をスムーズに進められます。

3. 注文受付機能(ハンディ端末との連携機能)

飲食店では、伝票を手書きするよりも、ハンディ端末を導入してPOSレジと連携させることで、受注処理が正確になり、オーダーミスが減少します。

このような注文処理の仕組みは「オーダーエントリーシステム(OES)」と呼ばれ、近年多くの飲食店で採用されています。

◆ハンディ端末を使った注文受付機能(OES)のメリット
 ✓オーダースピードが向上する
 ✓紙の伝票に比べてオーダーミスが減る
 ✓売り切れ商品の注文を防げる
 ✓リアルタイムで売上を把握できる

ハンディ端末には専用機器がよく使われますが、実はスマホでも代替可能です。使っていないスマホがあれば、スマレジ・ウェイターなどのOES専用アプリをインストールすることで、スマレジのようなPOSと簡単に連携し、すぐにオーダーエントリーシステムとして利用できます。

POSレジとの連携を考える場合、無料プランがある「スマレジ」のハンディアプリ(スマレジ・ウェイター)がおすすめです。1店舗のみの小規模飲食店であれば、無料でスマレジ・ウェイターを利用できます。

飲食店でPOSレジの導入を検討している方は、スマレジ公式ホームページから資料請求してみてはいかがでしょうか。

② 売上管理機能

POSの価値を最大限に引き出す重要な機能が売上管理機能です。この機能では、日別、月別、曜日別、時間別、商品別、部門別、スタッフ別など、さまざまな項目で売上状況を集計・分析できます。これにより、「いつが最も売れる時期か」「売れ筋の商品は何か」「売上成績の良いスタッフは誰か」といったポイントを把握し、新たな気づきやインサイトを得られます。

また、売上データを活用して、以下のような仮説検証も可能です。例えば、毎週水曜日の夕方に売上が良い場合、近隣オフィスのノー残業デーが影響している可能性があります。スタッフAさんの勤務日に売上が高い場合、リピーターの多さが要因かもしれません。月曜日に特定の商品がよく売れる場合、セット商品の提案が効果的かもしれません。

売上管理機能は店舗経営に欠かせないもので、大手5社のPOSレジアプリには搭載されています。ただし、サービスごとに集計項目や分析機能が異なるため、必要なデータ取得や分析が可能なサービスを慎重に選びましょう。もしアプリに分析機能がない場合でも、CSVデータをエクスポートしてエクセルで独自分析ができるので、エクスポート機能の仕様確認も重要です。

③ 顧客管理機能

顧客管理機能は、スタッフが担当するお客様の情報や対応履歴をデータで管理・共有するための機能です。担当スタッフが不在でもスムーズなサービス提供を可能にし、優良顧客の離脱を未然に防ぎます。

この機能では、以下の情報を登録・管理します。

◆顧客情報の管理項目(例)

・基本情報:氏名、性別、年齢、住所、メールアドレス など

・購買情報:購入日時、購入サービス、購入数量 など

・付加情報:ご要望、趣味や好み、来店時の応対内容 など

例えば、美容室やサロンでは、来店時の会話や対応内容を記録しておくことで、初めて担当するスタッフでも前回の履歴を確認してスムーズな接客が可能です。これにより顧客とスタッフのストレスを軽減し、満足度を向上させるだけでなく、履歴を基にした最適なサービス提案もできます。

さらに、メルマガやデータマーケティングにも活用でき、CRMやメルマガツールを導入することで、優良顧客や休眠顧客といったセグメントごとに個別提案や来店キャンペーンを行うことが可能です。

また、来店履歴や登録情報を活用して、来店周期の分析や誕生日・記念日に合わせたリマインド通知の配信もできます。具体的には、一定期間来店のない顧客への再来店促進メッセージや、誕生日に合わせたクーポン配布などで再来店のきっかけを作れます。

④ 在庫管理機能

在庫管理機能を利用すると、商品登録時に在庫管理が同時に行え、色やサイズなどバリエーションのある商品も個別に管理できます。

小売店では棚卸しの際に在庫と売上数が一致しないことも珍しくありませんが、「スマレジ」では個別に在庫調整を行い、在庫引当を実施します。また、在庫数が常にデジタルで更新されるため、手間のかかる棚卸し作業もペーパーベースの確認に比べて大幅に効率化され、時間や工数を削減できます。

「複数店舗管理機能」を併用すれば店舗ごとに在庫管理が可能ですが、機能がない場合は複数店舗の在庫をまとめて管理することになり、細かな在庫管理が難しくなります。正確な在庫管理は売上向上にも重要なので、複数店舗を運営する際は複数店舗管理機能を備えたPOSレジアプリを選びましょう。

さらに、以下の在庫管理機能があると便利です。

✓在庫変動履歴機能
✓在庫が少ない場合の自動通知
✓在庫補充用の注文書自動作成機能
✓店舗・ECサイトの在庫共有機能

在庫変動履歴機能で過剰な仕入れを防ぎ、注文書自動作成機能で業務効率化が期待できます。

⑤ アクセス権限機能

スタッフアカウントのアクセス権限を管理できる機能です。この機能では、スタッフリーダーに値引きや払い戻しなどの金銭関連の決定権を付与するなど、スタッフの役職や職域に応じて使用できる機能を制限・管理できます。

特に、入社したばかりのアルバイトスタッフがいる場合は、最初に厳格な権限管理を行い、その後スタッフの成長や業務内容の変化に応じて、POSレジでアクセス権限を柔軟に変更することが可能です。権限を与える具体的な業務例として、以下のようなものがあります。

◆権限を付与する業務の例
 ・受注処理
 ・発注処理
 ・売上確認
 ・スタッフの追加
 ・値引き、割引処理(クーポン適用、任意値引きなど)
 ・返品、払い戻し処理
 ・在庫数変更、廃棄処理
 ・レジ締め、日報出力
 ・商品登録

例えば、新人スタッフにはまず基本的な操作権限のみを与え、業務に慣れるにつれて少しずつ権限を拡大することで、過剰な権限付与によるリスクを避けることができます。こうした段階的な権限管理は、不正行為の防止やミスの抑止にもつながります。

⑥ 複数店舗管理機能

複数店舗を運営する際には欠かせない機能です。この複数店舗管理機能では、売上、在庫、商品、スタッフ、勤怠、アクセス権限などを店舗ごとに設定・管理できます。

各店舗の売上状況をリアルタイムで画面上から確認できるため、店舗ごとの状況に応じた適切な指示や指導が可能になります。また、店舗別やエリア別の売上集計も行えるため、店舗ごとの課題と事業全体の課題を明確に分けて把握でき、迅速な経営判断に役立ちます。

◆複数店舗管理機能イメージ

⑦ ポイントプログラム機能

ポイントプログラムとしては「Vポイント(旧Tポイント)」や「Ponta」が有名ですが、このようなポイントプログラムを店舗で独自に展開すれば、売上をさらに伸ばす工夫が可能です。

従来の紙のポイントカードでは簡単に導入できますが、管理が煩雑で、顧客が持ち歩いてくれないと意味がありません。

スマレジでは、独自のポイントプログラムを組むことができ、取引時にポイント付与を忘れても、後から取引履歴一覧を確認してポイントを付与することができます。

POSレジを利用する際は、こうしたポイントプログラムと連携することでリピート客を増やし、店舗の売上向上に貢献します。POSレジを選ぶ際には、このようなポイントプログラムとの連携が可能かどうかを事前に確認するべきです。

⑧ 外部サービスとの連携機能

POSレジアプリの基本機能に加え、他社サービスやシステムと連携することで、サービスを強化し、業務効率を向上させることができます。

連携できるサービスとしては、以下のようなものが考えられます。

◆連携サービスの例

・会計ソフト
・決済サービス
・予約システム
・フードデリバリーサービス
・ECサイト

会計ソフト「freee」などは、POSレジと連携することで売上データを自動的に取り込むことができます。経理や簿記の知識がなくても、日々の会計帳簿や決算書の作成が簡単に行えるため、個人事業主や中小企業の確定申告や青色申告に役立ちます。

予約システムは、美容院や飲食店、宿泊施設、クリニックなど予約制の業種で大幅な業務効率化を可能にします。「24時間予約対応」「ダブルブッキング防止」「事前決済」など、多くの利点があります。

飲食店では、「Uber Eats」や「出前館」などのフードデリバリーサービスと連携することで、注文情報をPOSレジに自動取り込みし、店内注文と一括管理することができます。

さらに、ECサイトと連携すれば、ポイントプログラムを店舗とオンライン間で一元管理できるようになります。例えば、実店舗で貯めたポイントをECで使用したり、その逆も可能になり、顧客ロイヤルティの向上や柔軟なCRM施策につながります。

POSレジを選ぶ際には、「どのような外部連携が可能か」を確認しておくことが重要です。

投稿者 MARIYA